草を分けただけの僕へと落ちるその小径と どんよりと低い真冬の空とのつなぎ目に
独り言のような白い息を吐きながら 少しうつむき加減の君がやっと現れる
先回りの待ち伏せを悟られまいと 君の前を歩くフリを決め込んでいた僕は
我ながら 呆れるばかりの素早さできびすを返し
高鳴る胸に揺れそうな ゆっくりとした足取りで歩き始めた
一歩 二歩 三歩と 僕は君を試すための無限とも思える足音に指を折る
永い永い十二歩目 ついに君の僕を呼ぶ声が 遺棄された冬枯れの造成地に響いた
一声では気づかぬつもりの なんと愚かしいことよ
音がするほど強く振り返った僕の本気に 遠すぎるはずの君の笑顔がまっすぐに届く
いつも君だけに無条件の笑顔を僕も返すが それで精一杯の立ちすくみの情けなさ
すると君は僕に向かって大げさに手を振り 何かに押されるように強く走り出した
えっ? 僕はどうすればいい?
君の前を歩くことしか頭になかった僕は たじろぎ のぼせていた
"ぎゃ"
押し殺したような 低い短い濁音だった
気づくと必死の前傾姿勢の君が 一瞬驚異的な加速度を得て
極限までに引き延ばされた "おおっ" という顔で 僕を 地べたを
そして飛んだ
あ然として言葉もない僕の手前ほんの2〜3mまで 無傷が奇跡のあられもない大宙返り
すべてがはっきりとスローモーションだった
だから僕は 草にすべり落ちる君を確実に踏み止めたんだ
" ″"
二度目のそれは 濁点だけを僕に残した